メインコンテンツへスキップ

恐怖指数は何に使えて、何に使えないのか

ほたる
公開日:
約22分

どうも、ほたるです。

相場が大きく下がると、「恐怖指数が上がっている」という言葉を目にします。

私も「恐怖のときに買うのがいい」というのは、なんとなく理解していました。

ただ、「どの時間軸で見るのか」「そもそも何を測っているのか」と聞かれると、説明できない自分がいました。

そこで一度、基礎から整理してみることにしました。

この記事では、恐怖指数の正体と、VIXという別の指標との違いを確認します。そのうえで、長期投資で使える場面と、使えない場面をまとめていきます。

もちろん、この記事は特定の投資商品を推奨するものではありません。

あくまで私自身の理解の整理として読んでいただければと思います。

「恐怖指数」は、ひとつじゃない

日本語で「恐怖指数」というと、一般にはVIXを指すことが多いと思います。

VIXとは、S&P500のオプション価格から算出される、市場が予想している変動の大きさのことです。(出典:CBOE

インプライドボラティリティ(=将来の変動率についての市場の予想値)を指数化したものになります。

一方で、最近の投資情報でよく見かけるのは、CNNが公表しているFear & Greed Indexです。(出典:CNN Business)こちらは日本語でも同じく「恐怖指数」と訳されることがあり、ここが混乱の入口になります。

この2つは、実は別物です。混同すると、読み方を間違えてしまいます。

VIXFear & Greed Index
発信元CBOE(1993年から)CNN Business(2012年から)
入力オプション価格1種類7種類の指標
測るもの今後30日の予想変動率心理の合成スコア(0〜100)
時間軸30日(明確)5日から52週(混合)
向き高い=恐怖低い=恐怖

ここで面白いのが、両者の関係です。VIXはFear & Greed Indexの構成要素の1つになっています。対立するものではなく、片方がもう片方を部品として含んでいる関係です。

たとえるなら、VIXは体温計で、Fear & Greed Indexは総合診断というところでしょうか。

体温は大事な指標ですが、それだけで体調の全体が分かるわけではないよね、と考えれば理解しやすいかもしれません。

キーインサイト

VIXは体温計、Fear & Greed Indexは総合診断。対立するものではなく、片方がもう片方を部品として含んでいる関係です。

ここまでは、恐怖指数の中身について確認してきました。

では、その時間軸はどうなっているのでしょうか。

Fear & Greed Index の時間軸は「混合」されている

自分が最初に思ったのが「この指数は何分足なのか」ということです。

調べてみましたが、単一の答えはありませんでした。

理由は、7つの指標それぞれが、違う期間を見ているからです。

  • 短期(1週間〜1ヶ月)

    プット・コールレシオ(5日平均)/安全資産需要(20日)/VIX(30日先)

  • 中期

    株価ブレッドス/ジャンク債需要(現在の水準)

  • 長期(6ヶ月〜1年)

    市場モメンタム(125日移動平均)/株価の強さ(52週の高値・安値)

指数全体で見ると、数週間から数ヶ月のセンチメントを表していることになります。(出典:CNN Business

つまり長期のトレンド、たとえば数年単位の流れは測れない可能性が高いということです。

ここで一つ、実務的におもしろい見方があります。

それは、どの指標が極端な値を牽引しているかを見るというものです。

短期の指標だけで極端な値になっているなら、パニック的な動きで戻りが速い可能性があります。

一方で、52週の高値・安値やジャンク債のスプレッドといった長期の指標まで崩れているなら、話は長引きやすくなります。

そして、もう一つ大事な点があります。

恐怖指数は、需給そのものを測ってはいないということです

指数が使っているのは、価格、ボラティリティ、信用スプレッド、オプションの建玉です。

これらから「心理」を推定しているわけです。「誰がどれだけ売ったのか」という需給は、直接的には見ていません。

たとえるなら、顔色を見て熱があると推測しているようなものです。体温計で測っているわけではありません。

需給そのものを見たいなら、投資部門別売買動向や信用取引残高、空売り残高といった別の道具が必要になります。

ここまでで、恐怖指数は短期の心理を映す道具だと分かりました。

では多くの人が関心を持ちそうな、長期の割安さは何で測るのでしょうか。

長期の割安さは、別の道具で測る

恐怖指数は短期の心理の指標です。長期の価値を測る道具ではありません

長期の割安さを見るのは、バリュエーション(=割高か割安かの度合い)の仕事です。

代表的なのが、CAPE(シラーPER)です。

CAPEは、株価を過去10年平均の実質EPS(=1株あたり利益)で割ったものです。(出典:ロバート・シラー(イェール大学)のデータ

1年だけの利益を使うと景気の波に振り回されるので、10年分を平均してならすのが特徴です。

過去のデータを見ると、出発点のCAPEが低いほど、その後の長期リターンは高くなる傾向があります。

出発点のCAPEと、その後10年の実質リターン(年率)
11.5% 低CAPE(平均7.0) 2.2% 高CAPE(平均31.9)
※1881年以降の年次CAPEを元にした集計
出典:Financial Post

とはいえ、この関係を過信はできません。説明力は26〜36%程度で、3分の1ほどしか当てはまらないからです。(出典:Research Affiliatesの研究

あくまで過去を元にしたデータであり、将来を約束するものでもありません。

しかも、CAPEが高いからといって、すぐ下がるわけでもありません。割高な状態は何年も続くことがあります。

だから私は、予測の道具というより、期待リターンの目安として付き合うのが現実的だと考えています。

そのうえで現在地を見ると、2026年9月時点のCAPEは約40です。

これは過去60年の月次データのうち、上位3%に入る水準になります。(出典:ShillerのデータMorningstar)歴史的に見れば、かなり割高な部類に入るということです。

参考までに、過去に恐怖指数がどこまで下がったかを振り返っておきます。

  1. VIX誕生
    CBOEが市場の恐怖を数値化
    1993
  2. Fear & Greed Index誕生
    CNNが7指標の合成指数を公開
    2012
  3. コロナ・ショック
    Extreme Fearを記録
    2
    2020/3
  4. 関税ショック
    Extreme Fearを記録
    4
    2025/4
  5. イラン情勢
    Extreme Fearを記録
    15
    2026/3
  6. 現在
    CAPEは約40、歴史的割高圏
    約40
    2026/9

恐怖は繰り返し訪れて、そのたびに市場は戻ってきました。

ここまでで、短期の心理と長期の価値という、2つの別の軸が出てきました。

この違いを整理すると、投資の道具の限界が見えてきます。

「測れるもの」と「測れないもの」

ここまでの内容を、一度整理してみます。

恐怖指数とバリュエーションは、別の軸
長期 心理(センチメント)
バリュエーション
長期の割安さを見る
恐怖指数
短期の心理を見る
価値(バリュエーション) 短期
測れるもの 測れないもの
現在の価格 なぜ売られたのか
現在のバリュエーション いつ底なのか
過去の統計 恐怖がいつ終わるか
自分の感情 次の出来事

恐怖指数にしても、バリュエーションにしても、測っているのは「今どこにいるか」です。

「いつ目的地に着くか」は測れません。

そして、なぜ売られたのかという理由も、実は分かりません。

ニュースでは「〜が原因で売られた」と説明されますが、それは後から付けられた物語であることが多いように思います。

理由は複数あるでしょうし、タイミングの問題もあるでしょうし、きっかけ待ちだっただけかもしれません。

売られるときには売られるなりの理由が、買われるときには買われるなりの理由が、いくつも重なっています。

だからこそ、理由を追いかけても、再現性のある次の判断にはつながりにくいのだと思います。

投資の道具は「現在地」しか測れない。「到着時刻」は誰にも測れない。

ここが、私が今回いちばん整理できた点です。

では、この前提を踏まえて、実際にどう使うのか。

最後に私のやり方を共有します。

では、どう使うのか

ここからは私自身の使い方です。

あくまで一例で、正解ではないという前提で読んでください。

私は、この2つを役割分担させています。

  • 相場感は恐怖指数。「今そんな感じなんだ」という確認に使う
  • 価値判断はバリュエーション。週足や月足、年足での割安さを検討する
相場感(恐怖指数) 価値判断(バリュエーション) 長期は航路を守る

そして、長期の積立は淡々と続けます。

相場感や価値判断は、あくまでスポットで買い増すときの補助です。 航路を守るという感覚に近いかもしれません。

とはいえ、航路を守ることが常に正解とも限らないという考えも持っています。 前提が変われば、守り続けること自体が非合理になるからです。

だから、複数のシナリオを持っておいて、間違っていたらすぐ変える。それくらいの構えでいたいと思っています。

もう一つ、長期投資家にとっての恐怖指数には、別の使い方があると考えています。

それは、自分の感情を客観視する鏡として使うことです。

それは恐怖指数が極端な値になったとき、自分がどう感じたかを記録しておくというものです。

そうすると、次の暴落のときに、自分の取扱説明書やマニュアルとして機能します。

「前回はこう感じたけど、結果はこうだった」というデータが自分の中に積み上がっていきます。

長期で見れば割安でも、それが3年続くことはあり得ます。

そのときに動じないためには、市場の指標よりも、自分のリスクの取り方を知っておくことのほうが役に立つのかもしれません。

自分なりのアセットアロケーションを組んで、許容リスクを見極めつつ、生活ひいては人生に合わせて調整していく。

まずはそこからスタートすると良いのかなと思いました。

まとめ

今回整理したかったのは、恐怖指数は何に使えて、何に使えないのかということでした。

恐怖指数は短期の心理、バリュエーションは長期の価値。この2つは別の軸です。

混同すると、長期投資の判断を誤る可能性があります。

そして、どちらの道具も測れるのは現在地だけです。到着時刻は測れません。

だからこそ、ルールを決めて淡々と続ける、前提が変わったらルールを再検討するという地味な結論に落ち着きます。

ぜひ一度、ご自身が何を「現在地」の基準にしているかを、見直してみてはいかがでしょうか。

意外と、なんとなくで済ませていた部分が見つかるかもしれません。

まあ、そんな感じで、SNSでよく見かける恐怖指数と上手に付き合っていけるといいなぁという話でした。

参考にしたデータ・出典